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まだいるのかな? [北九州市]

エイ紫川を遊泳 貝食い荒らす心配も
「紫川下流にエイが出没している」。そんな情報を聞き付けた。市街地を流れる紫川(むらさきがわ)は北九州市100+ 件のシンボルのような河川だ。エイの遊泳なんて水族館でしか見たことがない。いきなりそんなものを目撃すれば通行人も驚くことだろう。早速現場へ向かった。

■去年の夏から

 「ああ、エイですよね。確かに見ました。僕が見たときは3匹泳いでましたよ」

 小倉北区室町、常盤(ときわ)橋近くの飲食店店主大島治さん(49)はそう話す。大島さんが指した橋の下を半信半疑でのぞいてみると、すぐにエイが確認できた。横幅は1メートルくらいあるだろうか。3匹ほどが気持ちよさそうに川を漂っているではないか。

 大島さんによると、エイが目撃されるようになったのは去年から。夏ごろになるとどこからともなく姿を見せ、「川底や、橋脚に張り付くアサリやムラサキイガイを食べていく」という。今では優雅に泳ぐエイの姿を一目見ようと多くの人が訪れるそうだ。

 山口県下関市の水族館「海響館」によると、横幅や頭部の形状などから、目撃されたのはナルトビエイとみられる。暖かい気候を好み、夏場になると水温の上がりやすい浅瀬や河口付近に餌を求めて頻繁にやってくるという。彼らが思わず立ち寄りたいほど、紫川には餌が豊富にあるのだろうか。

■死の海 今は昔

 「昔は川の底にはヘドロがたまっていたからねぇ」。川の近くで生まれ育った女性(83)は振り返る。かつての死の海と呼ばれた洞海湾。そこにつながる紫川も下水道の未整備や工業排水のせいで、1970年代ごろまでは異臭がひどく、ヘドロが底にたまるなど汚染が進んでいた。

 市水環境課の松田麻左武課長は「エイが泳げるほど川が浄化された証拠でしょう」と話す。下水道設備や工業排水の規制が奏功し、今では200種類以上の水生生物が確認されるほど河川環境は改善された。多様な生物が住むことによって、エイにとってはいい餌場となっているのだろう。

 「ただですね…」。松田課長は複雑な表情で続けた。「ナルトビエイは貝を食い荒らしてしまうということで、漁業関係者からは評判が悪いんですよ…」

 県水産海洋技術センターによると、豊前海では、アサリ減少の一因に約10年前から増え始めたナルトビエイの存在があるとして駆除事業を行っているという。うーん、そうなるとエイの登場は素直に喜ぶことはできない…。しかし、もともと暖かい気候を好むエイが九州北部に現れ始めたのはなぜだろうか。

■海水温が上昇

 「恐らく沿岸部の海水の温度が上がっているためだと思います」

 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究所の山口敦子教授はこう推測した。通常、河口付近や浅瀬は冬場は外気の影響で水温が低く、エイたちは冬を越すことができない。そのために群れは深海部の水が暖かい場所へ向かう。

 山口教授は「地球規模の気候変動と結び付けるのは早計」とするが、実際、2000年ごろから九州北部沿岸の水温は上昇し、越冬できる場所が増えた。そのため浅瀬など人目に付きやすい場所にエイが顔を出す機会が増えてきたと考えられるという。

 なるほど、エイの出現は単なる珍事ではなく、環境改善や海水温上昇など、さまざま要因が交わった結果による生態系変化の一端のようだ。

 漁業関係者にとっては「悪役」のナルトビエイの登場は何とも複雑な思いだが、北九州市100+ 件の水辺環境向上の証左と考えれば、歓迎すべき事なのかもしれない。


台風が過ぎて晴れたら見に行ってみよう
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